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1.ジーニアス=セイジ
(テイルズ オブ シンフォニア)
2.月野コン太
(爆球HIT!クラッシュビーダマン)
3.エドワード=エルリック
(鋼の錬金術師)
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まぁ前回載せた『むしキング』の時と同じような感じです。
詳しくは「ブログ内検索」機能で「むしキング」と打って検索して頂ければ該当記事が出てくると思います。
カテゴリ「妄想駄文」をクリックしてみるのもいいかもですね。
とにかく普段のブログ的な日常話は次回次々回でまとめてやるとして、今日はもう時間無いし疲れたし明日も早いので、文化祭用に執筆した作品を載せときます。
よろしければお暇な時にでも眺めたって下さいませ。
それではノシ
モンスターハンターポータブルサード予約してないんだけどこれってもう発売日当日の入手は無理なのかな?(っぽいね
『幽霊権』
目の前には僕がいる。病院のベッドに横たわったまま、二度と目を開けることのない僕の体。そしてそれを見つめる、幽霊の僕。
死因は何だったか。ただ、体はあまり丈夫ではなかったのは確かだ。けれどそんなことはもはやどうでもいい。身体の強弱なんてもう意味の無いことなのだから。
死んだら、それまで。
部屋の中で父さんと母さんの泣き声が響き、まだ幼い弟は状況を把握出来ずに戸惑い、お医者さんたちも俯く。
その状況を、当の僕は冷静に眺めていた。まるで他人事のように現実味が無い。
ふと視界の端で僕の影が動いた。そこで初めて幽霊にも影があるということに気付き、驚く。
それは影と言うにはあまりにはっきりとした黒。形も大きさもまるっきり僕そのものだ。
影は光源を無視して僕の正面に回り込み、頭からぺりりと床から剥がれてその身を起こした。
こいつは、何だ。抱いて当然の疑問。それに答えるように、頭の中で声が響いた。
――君を導こう。
今のはこいつが喋ったのだろうか。喋る、と言っても彼には口どころか顔そのものが無いのだが。とにかく声まで僕と同じせいで、まるで僕自身が独り言を呟いているような、奇妙な錯覚に陥る。……いや、あるいは本当にただの妄想なのだろうか。
若干の困惑。しかしそれに構わず、そいつは片方の手で僕の手を取り、もう片方で上を指差す。そこには天井があるだけだったが、彼が示しているのはもっと向こうにあるものだと感じた。
――君は選べる。逝くか、彷徨うか。
逝く……逝くってどこへ。僕は天国に逝けるのだろうか。親より先に死んだ子どもは親不孝の罪を背負うと聞いたことがある。
――まだ逝きたくないのなら彷徨えば良い。君にはその権利がある。
彷徨うというと、浮遊霊にでもなるのだろうか。彷徨える権利、言うなれば浮遊権。
良いかもしれない。生きている間に経験出来なかった、僕の知らない世界を、せめて成仏する前に見ておきたい。
――わかった。それじゃあ。
僕が言葉にして伝えるまでもなく、意思を汲み取ったそいつは地面に吸い込まれるように平面化し、何の変哲も無いただの影のようになってしまった。どれだけ呼び掛けようと、うんともすんとも言わない。
もう影に構うのは諦め、改めて頭を整理すると、抜け殻にしがみつく家族を残して僕は病院を出た。
目の前には事故現場。どこにでもあるような交差点で、電柱にめり込むワゴン車と、駆け付けたばかりの救急車。自分は悪くないと喚く男と、それを宥める警察官に、僕を含めた大勢の野次馬。夜中だというのに辺りは大きな喧騒に包まれていた。
交通事故、ついさっき起こったばかりだ。人々の会話に聞き耳を立ててみたところ、どうやらワゴン車は、信号を無視して横断しようとした男を避けたために、道を反れて電柱にぶつかってしまったらしい。乗っていた家族は皆即死したようだ。
人だかりを抜け、「立ち入り禁止」の仕切りも越えて車に近付く。当然、僕を咎める者はいない。
父親と母親、そして赤ん坊。ひしゃげた車の中、血を流してぐったりしている三人の遺体。直接目の当たりにして耐えられなくなった僕は、また周囲の人混みへ戻った。
間も無くして、それぞれの魂が肉体から抜け出てきた。しかし様子がおかしい。赤ん坊の霊だけがぴくりとも動かないのだ。それに影が[普通の影]のままなのだ。戸惑う両親や僕をよそに、赤ん坊はその場から蒸発するように消えてしまった。
あれが「逝く」ということなのだろうか。影には何の変哲もなかったのに。赤ん坊の霊には浮遊権が認められなかったのか、それともあの子自身が選んだことなのか、それはわからない。
両親の霊は赤ん坊の遺体を見つめてうなだれている。僕の時と同じだ。当の本人は静かな抜け殻になり、残った者はどうしようも出来ない現実に悲しむ。僕よりも幼くして失われてしまった命。人間なんて呆気無いものだ。僕の生涯もこんなに早く幕を閉じてしまった。
ただ、あの赤ん坊よりは遥かに長生き出来た。死の瞬間も安らかだった。そういう意味では、僕なんてまだまだ恵まれていたのかもしれない。
ふと気付いた時には、父親と母親の霊もいつの間にか消えていた。おそらくは赤ん坊の霊を追って逝ったのだろう。浮遊権を放棄して。
しかし影はどうしたのか。あの家族の前に現れた様子は無かった、と思う。
「死神はね、自分の前にだけ現れるんだよ。あぁ、私がそう呼んでいるだけなんだが、死神というのは『影』のことさ」
突然の声に驚いて振り返ると、長身の男が立っていた。そしてすぐに判る。彼も幽霊だ。
「どうやら君はまだ死んで間もないようだね。私はもう何年もこの世を彷徨っているんだが、もし良ければ少し話さないかい?」
どうせ時間なんていくらでもある。僕は迷わず了承した。
「ありがとう。それじゃあ場所を変えようか。ここは居心地が悪い」
改めて周囲を見る。パトカーや救急車のランプが眩しく、人だかりもまだ無くなる様子は無い。
僕も向けられたことのある、好奇や哀れみの視線。確かに気分の良いものではない。これにも同意し、その場を離れる際、最後にもう一度だけ振り返る。忙しない喧騒の中、ワゴン車と家族の遺体だけが沈黙していた。
目の前には男の霊。やって来たのは小さな公園の前、人通りのほとんどない細い道。流石にここは静かだった。
「さて、まずは死神についてなんだが―」
それから彼が語ってくれたのは、人間の魂は影に導かれるということ。他の生物もそうなのかはわからない。動物や蟲から話を聞くなんて出来ないから。
彼が死神と呼ぶような影も、自分以外には普通の影にしか見えず、声も聞こえないのだそうだ。
「あれは生涯をともに過ごし、ずっと行動を監視してるのさ。君も会っただろう? 君だけの死神に」
そうか。なら僕に見えなかっただけて、あの家族にもちゃんと付いていたのだろうか。自分だけの案内人が。
「ただ、どうやら影は心から望むことが無ければ動かないみたいだ。おかげで私は長いこと死神とはご無沙汰だよ。最後に選択肢を与えられたのはもう十年以上も前になるかな」
これには少し怯んだ。いつでも成仏出来るわけじゃなかったのか。
「霊の姿というのは死の直前の状態そのままだ。少なくとも今まで私が出会ってきた人たちは皆そうだった。私も多分、その例に漏れないだろう」
多分、というのはどういうことか。僕は僅かに首を捻ったが、その答えはすぐに返された。
「あぁ、実は私は自分の姿を見たことが無いんだ。生まれつきで、視覚に少々難があってね。ほら、わかるかな?」
瞼をいっぱいに持ち上げて僕に顔を近付けてきた彼の瞳は、白く濁っていた。
「私には君の姿は見えない。ただ気配を感じるよ。戸惑いと不安に揺らめく、生前どころか霊としても未熟な君の存在をね」
不安や戸惑いを感じているという指摘に異論はない。実際その通りなのだから。死んで浮遊霊になったなんて、どう慌てていいのかもわからない。
それにしても「存在」だなんて。霊に対して「存在している」という表現は当て嵌まるのだろうか。存在というのは、誰かに認識されて初めて成り立つんじゃないのか。そして僕らは……。
「おや、どうしたのかな、震えているようだが? 大丈夫、何も怖いことなんて無い。だって―」
男は僕の肩に手を置き、目線が同じ高さになるように屈んだ。その瞬間、彼の背後から無灯火の自転車が、ブレーキどころかベルを鳴らすこともなく、僕らの体をすり抜けて行った。
「ほらね。既に死んだ私たちは、もう死ななくて済むんだ」
彼は笑っていたが、僕はそれこそが恐怖だった。今ここにいる僕らは、生きた人間には誰にも認識されない。途端に、今さらながら「自分が死んだ」という事実が、胸に押し寄せてくる。
それに不安もある。彼は「もう死なない」と言ったが、「逝く」というのは霊にとっての死とは考えられないだろうか。成仏した霊は、その後いったいどうなってしまうのか。
震えの治まらない僕に、彼は眉を寄せる。
「ふむ、なかなか割り切れないみたいだね。それなら別の話でもして気を紛らわせようか。そうだなぁ……それじゃあ私の過去についてちょっと語ってもいいかな?」
僕は何も返事はせず、ただ俯いていたが、彼は気にせず話し始めた。
「生まれたての子どもの霊というのは、そのほとんどが歪なものらしい。半端に魂が宿り始めた状態でおろされた子供の霊なんて、そりゃあたいそう醜いものだと聞くよ」
私も実際に見たことは無いんだがね、と微笑む。いったい何がおかしいのか。
「その霊は親の体にしがみつき、また新しく命が芽生えた時、その子どもの魂に混ざるんだ。そしてちゃんと産まれるまでそれが繰り返される。それが水子の権利だ」
そこまで話して、男の顔から表情が消えた。直前の笑みなどまるで嘘のように。
「私の親は、私を産む前に一度おろしたらしくてね。もしかしたら私の目は呪いだったのかな。親は子を見ず、子は親を見られず。水子は私にも親を見れないようにしたかったのかもしれないな」
彼は気付いているのだろうか。自分の声が段々と荒くなってきていることに。
「このことに初めて思い至った時、私は感動したよ。なにせ私が視力を失ったことにはちゃんと意味があったということじゃないか! 私が盲目なのは仕方のないことだったのさ!」
そこまで叫び、ようやく彼は正気に戻ったのか、興奮を落ち着かせるように深呼吸する仕草をした。お互い気まずい空気になってしまい顔を俯かせていたが、やがて男の方から口を開いた。
「……すまない、つい熱くなってしまった。君にはあまり良い話じゃなかったね。これ以上私なんかが傍にいても迷惑だろう。もう行くよ」
男は最後にもう一度謝罪を述べると、二度と振り返らずに去って行った。離れていくにつれ、彼の後ろ姿はだんだんと闇に溶け込んでいく。そして完全に見えなくなるかという時、一瞬だけ彼の背中に何かがしがみ付いているふうに見えた。
僕はその場から急いで離れようと、彼とは正反対の方へ駆け出す。その際、背後に広がる暗闇の奥から、赤ん坊の泣き声のようなものが聞こえたのは……気のせいだろうか。
目の前には一軒家。まだ建てられたばかりのようだ。一見普通の家だが、人が住んでいる様子は無く、綺麗な外観に反して中からは異様な気配が溢れている。
その奇妙な感覚に気を取られてしばらく眺めていると、玄関をすり抜けて女性が出てきた。やはり霊だ。
「あら、また誰かがうちを覗いてるかと思えば、君も幽霊なのね。それにまだ死んだばかりみたい」
やはりわかるものなのだろうか。ひとまずお辞儀をすると、向こうも返してくれた。
彼女は強盗殺人に遭ったらしい。女性が留守番をしている時、空き巣のつもりで忍び込んだ男は彼女の悲鳴に驚き、包丁で刺してしまったのだ。
犯人は呆気なく逮捕されたという。いくら殺すつもりは無かったと言っても結果はこれだ。
旦那さんとお子さんは既に家を売り払い、どこかへ引っ越してしまったらしい。霊となった彼女には、その行き先を告げないまま。
「二人がこの家からいなくなって、独り呆然としている時、影が私に言ったの。『あなたは選べる。逝くか、彷徨うか、留まるか』って。そして私は留まることを望んだ」
この家を誰にも渡したくない。これから思い出を詰め込んでいく筈だった大切な場所だ。未練が無いわけがない。だから他人を寄せ付けないように……。
「この家を奪おうとしたやつらは皆追い返してやったわ。そしたら噂になっちゃったみたい。おかげで怖がって入居しようとする人も減ったの」
心底嬉しそうに明るく微笑む彼女。
「ただ、噂のせいで私を除霊しようとした人も何人か出てきた。まったく、幽霊だからって人権を無視するなんてひどいわよね? まぁでもあの人たちは素人だったから助かったわ」
「霊が見えもしない人に、私たちを除霊する権利は無いから」
彼女が浮かべたのは、それまでの無邪気な笑みとはまた違う、不適なものだった。僕は彼女が何故そんなに余裕があるのか理解出来ない。
「霊能力のある人でないと除霊は出来ない」ということは、逆に「本物の霊媒師なら強制的に霊を成仏させることも出来る」ということではないのか。
「君は何を怯えているの?」
怪訝な表情で問いかけてくる彼女に、自分の考えを話す。今さらになって、自分がこの世に生きてはいないという現実が辛くなったこと。世界はもっと素晴らしいものだと思っていたのに、それに疑問を持ち始めたこと。死んでなお「成仏」という第二の死を迎えることなど。
「ちょっと、ごめんね」
話を聞き終わった彼女は、それだけ言って僕を抱きしめた。そっと包み込むように、両腕を背中にまわされる。それがあまりに心地良くて、頭の中でぐるぐる回っていたごちゃごちゃが晴れていく。
僕は死んだ。それはとっくに受け入れていたつもりで、まだ実感できていないだけだった。いざ現実と向き合ってみれば、心にどうしようもない虚しさが生まれて、気の狂いそうな孤独感を与えてくる。
だからこの包まれているうちに、心を満たしておこう。もう二度とこんな風に母親に抱きしめられることは無いのだ。僕に触れるのは幽霊だけ。今僕が甘えられるのはこの人だけ。そう思ったら、なんだか目の奥が熱くなった。
一滴溢れる毎に、心が軽くなる。
しばらくして落ち着きを取り戻すと、恥ずかしくなったので離れた。そしてもう行くことにする。これ以上長くいると、僕までここを離れられなくなってしまうかもしれないから。
生前の思い出に囚われた彼女は少しだけ可哀想だったけれど、僕にどうこう言う資格なんて無い。お礼だけを述べて、また歩き出す。
そこでようやく気付いた。
何だろう、空気が淀んでいる。肌を撫でるねっとりとした感覚。体が重い。何かが腐ったような、鼻をつく異臭まで漂ってくる。気になって足を向けようとすると、
「そっちに行っちゃダメ」
決して大きくは無い、しかし思わずびくりとしてしまうような強い口調で呼び止められる。
「怨霊が近付いてきてる。とても強い思念に囚われた、哀れな霊。力の弱い人間や霊が近付くと危ないわ。君みたいに不安定な状態だと、特にね」
真剣な顔で見つめられる。おそらくこれは忠告ではなく、警告。
「ああまでなってしまうと、もはや生前の記憶も理性も無いわ。あれにはもう影がない。つまり自分の意思では成仏も出来ないの。ただずっと、この世界をはいずるしかない」
まるで自分のことのように、沈痛な面持ちで語る彼女。それを肯定するように、さらに言葉は紡がれた。
「私もいつかはああなるかもしれない。だって私には、その権利がある」
彼女がそう呟いた瞬間、また少し体が重くなった気がした。
つい先ほどまであんなに優しそうだった表情も、今は無機質なものになってしまった。そのなんと冷たい印象を与えることか。生者には出来ない顔。それが無性に悲しくて、また涙が込み上げた。
一滴溢れる毎に、心が重くなる。
目の前には家族がいる。弟の誕生日を祝う父親と母親。僕の家族、いや、家族「だった」人たち。父親だった人、母親だった人、弟だった人……けど今は違う。
僕が死んで、とても悲しんでくれていた父さんと母さん。それがもうすっかり笑顔を取り戻した。今も、この場に僕が欠けていることには何の疑問も抱いていない。近頃の弟への口癖は「お兄ちゃんの分までたくましく育て」だ。そしてまだ小さいながら弟もそれに応えようと頑張っている。
長い時間をかけて、友人や知り合いの家も巡ってみた。結果、僕がいなくなっても、みんなの生活は変わっていなかった。まるで無関係という風に、全く気に留めなかった人。はじめは悲しんでくれていた人も、だんだん僕のことを忘れていった。
どんなに深い仲でも、最終的には皆、いない人のことなど忘れてしまう。時間がその繋がりを弱くするのだ。日々の交流が無ければ、絆という鎖は簡単に風化してしまう。親友と呼べるようなやつでさえ、今や僕のために手を合わせることも無い。
そんな彼らを責めたりはしない。かと言ってこれからの生を応援する気にもならない。もう興味も関心も無い……他人事だから。
そう、僕はもう過去の存在。今、両親には弟こそが大切なのだ。この世にいない。僕はいない。だから「僕の友人」や「僕の家族」も、もういない。
死んだら独りぼっちになってしまった。これ以上この世に留まる意味はあるのか。どうして僕はここにいるのか。
僕が死んだことで、皆が悲しみに暮れる姿を期待したのか。逝く前にもっと自分が生きたこの世界を目に焼き付けておきたかったからか。単に逝くのが怖かっただけか。……多分、全部。
目の前には虚しい世界。死神、浮遊霊、地縛霊、悪霊……生きているうちには見えなかったものを見れた。いや、見てしまった。生きているからこそ感じる苦悩と、死んでもなお続く苦悩。
僕は思う。地獄は、ここなんじゃないか。この現世こそが、全ての生き物にとっての地獄じゃないのか。「逝く」というのは、この世界から解放されることなんじゃないだろうか。それなら、僕は……。
影が、動いた。